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《ネタバレ》 私が子供の頃(20年程前)までは、この映画の題材になっている妖精写真は、大真面目に「あのドイルが研究していた」「専門家もトリックの形跡はないと認めた」写真なのだと説明されていた。ところが20世紀最後になって、写真のトリックを撮影者本人が明かしたことで(映画の中で、トリックについて説明が足りず、観客は???という感じだと思うが)、突如として、荒唐無稽なトリック写真になってしまった。その時私の胸をよぎったのは「信じてはいなかったんだけど、信じたかったんだよなぁ」という思いだった。繰り返し観ていていつも思うのは、エルシーは妖精なんて本当は信じていなかったのではないかということ。ただ、息子を失った母親の嘆きにさらされ、妖精を信じた兄の形見が目の前にあって、さらに妖精を信じる従妹も現れた。だから彼女は妖精を見せてあげただけで、本当は信じていなかったのではないか。12歳の時に引き起こした事件のことを、長く口を閉ざした彼女の人生を思うと目眩がする。そして、この映画では妖精事件のもう1人の主人公であるサー・アーサー・コナン=ドイルを、ピーター・オトゥールが演じているが、素晴らしく良い。超常現象に惹かれずにはいられない人々の、悲しみをすべて表現している。地位も名誉も知能もあって、決して狂気とか愚鈍とか純粋とかではないけれども、強い絶望感と悲しみに支配されている。そういう男を上手く存在させていた。大きな悲しみにさらされたときに、超常現象に強烈に魅せられて、すがってしまう人々。それを利用し、それを金儲けや詐欺に使う人々。ただ、言いたいことは分かるが、ちょっと、感情に走りすぎでごちゃごちゃしているのが、この映画の難。本当に妖精を映像に登場させる必要はないんじゃないの?とか、死んだ男の子を最後にネタに持って来てるのってどうなんだろうとか? 最初はそういう部分が気になって仕方なかった。でも、エルシーのお父さんの冷静さとか、ほんのちょっとのところで清々しくピュアな印象が強い作品だと思う。そして私が一番好きなのは、カイテル演じる魔術師フーディニーの、芯の通った強さだ。彼の存在が、この物語をおとぎ話から現実の世界へと導く。ラストにフーディニーが語る言葉は、あたたかくて強い。
【ルクレツィアの娘】さん 6点(2003-07-03 21:20:40)
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