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《ネタバレ》 映画は祈りです。誰かの幸せや平穏な日々や、
健康などを誰にともなく、手を合わせ祈っている、 それが映画の隠された一面です。 どうかあの人が、どうかあの人が、どうかどうか、 そうやって目を硬く閉じて祈っているのです。 この映画は、今を生きる多くの被災した方々への 祈りです。 まさか、公開された2ヶ月先に阪神淡路大震災と並ぶ 日本の歴史に深く刻まれる大震災が起きるだなんて、 誰が想像できたでしょう。 今この瞬間もその街のこどもが、彼らが15年前に 感じた痛みと同じように感じ、苦しんでいる筈です。 否応なく容赦なく、執拗に深く深く。 そう思うと胸が痛くてしょうがなくなります。 だけど、だからこそこの映画には意味があるはずです。 手持ちカメラでまさに今その瞬間に呼吸する二人の痛みと、 心の触れ合いを、触れる事ができてしまいそうな距離感で、 直に感じれました。 目の前にいる人の言葉を目を見て聞いているかのような錯覚は、 ドキュメンタリーでもそうそう感じれないけど、 ちゃんとドラマとして二人の背景がその瞬間に見え隠れするから、 深く深く届くのだと思うのです。 歩いて歩いて、言葉を交わし、思いをぶつけ合う。 耐震強度の矛盾に苦しみながら建設業を続ける彼と、 トラウマに縛られ続けている彼女が、 その日と向き合うまでの時間。 特筆すべきは、一つだけ光の灯った部屋に 向かうまでのその光は、トラウマそのものであって、 恐怖でしかないのですが、戻ってきた時にはその光は、 とっても温かいものに変わって映るのです。 それが人です。 向き合うというのは、知りたくないことを知り、 時に傷を深めることもあると思います。 彼女はその日に向かって走った、では彼は? 来年にする、そう言い残して歩いて行きます。 二人のほんの少しの変化が、身近に感じられ、 強く心に響きました。 どうか、忘れないで欲しい。 どうか、知って欲しい。 どうか、早く笑顔が戻って欲しい。 この映画を観たら祈らずにはいられません。 【ボビー】さん [DVD(邦画)] 9点(2011-07-17 13:02:54)(良:1票)
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