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《ネタバレ》 タイトルと人物設定だけ拝借して、まるっきり別の軽妙極まる人情時代劇に昇華させた山中貞雄の高い力量には全くもって敬服するしかない。二十代でこんなハイレベルの演出力を発揮できるとは…(絶句)!!的確な省略法で観る者の想像力をいちいち刺激してくる場面場面のウマさときたら、もうヴェテラン・巨匠の域に入っているかのようだ。俳優アンサンブルも見事。河原崎長十郎扮する主人公・河内山宗俊が最初に登場する大道将棋シーン、大仰な見得を切るでもなく静かな凄みを漂わせ実にさりげない。中村翫右衛門演じるやくざの用心棒・金子市之丞の飄々とした掴み所の無さもユーモラスで絶品。「爪楊枝」という取るに足りない小道具でもセンス次第でキャラクター描写に大きな役割を果たせることがよく分かる。静と動の映画的リズム転換の上手さも群を抜いて素晴らしい。殊に若き原節子(お浪)がバカな弟のために身売りを決意する悲愴な場面での静かなタメ、一転して狭い路地裏を逃げながらバカ弟を庇いつつ死んでゆく宗俊と市之丞の壮絶な立ち回りの躍動感!緩急の付け方の絶妙さ・対比法の多用など唸らされる。コレで本人にとっては別に会心作でも何でもないのなら、山中貞雄の”真の傑作”レベルは一体どれほどだったのか??現存するのは僅かに三作、しかも時代劇のみときては彼の真価は永遠に誰にも判ることはあるまい。音声の悪さで1点マイナス。
【へちょちょ】さん 9点(2005-01-24 16:52:20)(良:4票)
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