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レビュー情報
本作の原作はもちろんチャンドラー「長いお別れ」ということになるのですが、基本プロットのみを借りて別世界を作り上げたような作品ですね。原作をバッサリ刈り込んだのみならず、大きな改変もあるのですが、それより何より、ここでフィリップ・マーロウ役を演じているのはエリオット・グールド。あの1人称の乾いた語りで描かれる反骨と行動の男とは大違い、飼い猫の機嫌を取り損ねて家出されてしまう、ただヨレヨレのオッサンな訳です。隣人がハダカでヨガをやってるオネーチャンたち、というのも脱力させられます。一応は、友人の妻殺し疑惑と自殺とか、行方不明の作家の捜索依頼とか、基本プロットに則った展開はあるものの、本作におけるマーロウのイメージたるや、何だか「自分がいじめられている事に気づいていないいじめられっ子」みたいなんですね。そういうマーロウが、何を仕出かすかわからない奇妙な登場人物たちに囲まれつつも、飄々としている。それが何ともユーモラスなのですが、同時に彼自身もまた何をやらかすかわからない存在となっていて、つまりは原作と離れた行動も平気でとってしまう油断のならない存在ともなっています。ラストシーンに至っては、『第三の男』の引用かと思いきやそれもおどけて崩して見せる。実にシャレた作品です。ところで本作の後半で、シュワそっくりの若者が登場して、しかも服を脱いでムキムキボディを披露してくれるのでシュワ本人であることが我々にもわかるのですが(笑)、本作といい、『さらば愛しき女よ』のスタローンといい、チャンドラー映画には何か「筋肉枠」みたいなものでもあるんですかね?
【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2015-05-31 08:55:43)(良:1票)
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