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雄大な風景とジジイの表情だけでコレほどまでに愛すべき映画が作れるとは、まさに一種の「映画作りに関する裏ワザ」と申せましょう。特に橋を渡るシーンの表情が何とも言えませんナ。ワタシもいつかあんな表情が自然とこぼれるような体験をしたいもんです。この映画、いかにも正攻法な描写に、「ちょっとご愛嬌」と加えられたヒネリと遊びがうまく噛み合い、ひと味違った作品になっています。リンチ監督は、自分はキワモノ映画ばかり撮っていても、実は、古きよき時代のクラシック作品への絶大な愛情と信頼を持っているのかなあ、と思いました。本作も軸となっている手法は、いわばオーソドックスなもの(象徴的に「見せ付けられる」鹿の角なんて、ちょっと懐かしい雰囲気の小道具)、でまあ、現在の映画においては、オーソドックスな手法というのが逆に新鮮だったりするわけなんだけども、おそらくこの映画ではそんな「時流に逆らう効果」なんていう場当たり的なものは狙っていない(そんな効果は結局は一時的なもの)。「昔のモノがいかに優れていようと、いまさら昔と同じことはできない」、これこそが真っ当なクリエイターの信念でありましょう。だもんで、本作は、「キチンと見せる心地よさ」を示しつつも、ちょっと照れたような「リンチ風味」を加えており(素材の味をホンの少しジャマするくらいがよいのです)、で結局は、気が付いたら何だかホロリとさせられてしまっている。ちょっとそぐわない言葉のようだけど、あえて、「痛快作」と呼ばせていただきましょう。
【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2005-04-02 14:39:50)
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