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「それから2000年が経った」というナレーションには思わず椅子からずり落ちそうになったが、ともあれなんとか観終えることができた。鉄腕アトムの序盤の頃のエピソードの、随所に覚えのあるネタが沢山転がっている感がある。ただ、アトムと違って十万馬力ではない主人公のデビッド少年は、見た目も仕草もあまりに人間っぽすぎる。ジャンクフェアの荒くれた連中をも一気に方向転換させるほどなのだから。そりゃ、まんまオスメント少年なのだから当り前なのだが。正直、少々驚かされたジュード・ロウの演じた無機質感を要求するのはさすがに酷であったろうが、もう少しデビッドに「メカ」としての雰囲気を、あえて醸し出すことが出来ていたならば、むしろ逆に私は、少年=アンドロイドに対しての、もののあわれを感じることができたかもしれない。アトムは近未来において自身が迫害を受け、いろいろな感情を持ちながらも人間の子供を守り、自分を認めてもらえるよう人間のために必死に尽くした。アニメ・漫画だと笑うなかれ、その姿は実に感動的だ。しかしスピルバーグの選んだ展開はどうであったか。デビッドは逆に「守って、守って」を連呼して周囲を散々な目に遭わせ、嫌われまくった挙げ句にあろうことか2000年間の長期水中引きこもりになってしまい(ここで、なぜ天馬博士じゃなかったホビー博士はデビッドを探せなかったのだろうか)、人間が死滅した世界で自分の平穏を見つけるという、すごいオチなのである。そしてたった一日だけの復活を遂げる母親を、その髪の毛から再生させる2000年後の驚異的なロボット(あるいはエイリアンか)たちの登場。これには青の妖精も文字通り真っ青であろう。メカの願いを叶えるために、神のごとき全能の存在によって人の命や肉体が道具のごとく扱われる。これはなんとも皮肉なおとぎ話の完結であり一種のコメディである。ともあれ我々人類にとっては情けなく悲劇的な結末であり、何とも後味が悪い。だから「このラストに感動しろ」って言われても、一応人間である小生には釈然としないものが残るのだ。
【なんだかんだいってもやっぱり色即是空(VF-154)】さん 5点(2005-01-13 15:31:30)
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