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《ネタバレ》 「エイミー」という人間の存在価値は、彼女が産まれる前からすでに決まっていたワケで。そんな重いものを背負い、それを肯定し利用して社会の中で「選ばれた人間」として生きてきた彼女に、ちょっと上昇志向があるだけの平凡なイケメン男がかなうわけがない。
エイミーは、自分を愛する事を止め、無職のクズ男に堕落して自分を失望させ、自分の人生をメチャクチャにした夫を、許さない。自分の人生をかけて破滅させようとする。あまりにも激しい完璧主義者の愛情の裏返しに、観ているこっちはビックリだ。 そして一転。 夫がTVで自分あてに「愛している」と熱烈なメッセージを贈ったことで、理想通りの完璧な夫婦像を作ることが出来る、夫は逃げられずに必ず協力するはず、と形勢が変わったと見るや、殺人すらいとわずに夫の元へ帰る。 夫が自分を内心で憎み恐れていようが、そんな事は彼女に関係ない。エイミーにとって一番大切なのは社会的な形。世間から理想の夫婦として見られること。そのためには、夫だけでなく子どもすら利用する。だって自分もそうやって親に利用されてきたんだし。「結婚ってそういうものでしょ?」 ある意味サイコ? エイミーの平凡な容姿や知性、落ち着いた物腰がそうは見せないが、中身は多分サイコパスすれすれ。そんなエイミーを生み出したのは、彼女の親と世の中である、という所がなんとも言えない。 まああそこまで行かなくとも、エイミーと同じ価値観で生きている人間は多い。夫の剛腕弁護士もエイミーと同じタイプだからこそ、エイミーが帰ってきた現状をハッピーと片づけ、「彼女を怒らせるな」と忠告して去って行ったわけで。夫がこの弁護士のようなタイプだったら、エイミーともっと上手くやれただろう。実情がどうであろうと対外的に仲良し夫婦を装えた。しかしそういう男ではなかったからこそ、エイミーは彼と恋に堕ち、結婚までしてしまったのだ。夫にそこまでの能力がなかっただけかもしれないが。まあ、人の心はなかなかうまく行かない。 観ている側によけいな情報を与えず、ぐいぐい引き込んでいく脚本はスバラシイ。話の行方がどう展開していくのか、結末がどうなるのか、観終わるまでわからないなんて久々の映画。後味はあまりよくないですが、面白かった。…にも関わらずこの点数なのは、登場人物に魅力がないのと共感できないのと「一度見たらもういいや」と思ってしまうため。バッドエンドにしても、一面の真実みたいなものを感じさせてほしかったな。 【りりらっち】さん [DVD(字幕)] 6点(2016-05-20 21:08:41)(良:2票)
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