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人物の伝記映画は、観るタイミングが難しい。
創られたエンターテイメント性が期待できないことと、描かれる「事実」に対する鑑賞者の知識量が、観賞後の感想に多分に影響してくるからだ。 フィリップ・シーモア・ホフマンという決して派手さのない俳優を主演に配し、アカデミー主演男優賞まで穫ってしまったことは、映画ファンとして興味深く、随分前から観たいと思っていた。 しかし、描かれる人物“トルーマン・カポーティ”に対する知識がほとんど無かったことが、食指を鈍らせていた。 カポーティ本人がどんな人物かは知らないが、映画世界の中で独特の人物像を創り上げ体現していた主演俳優の演技は、賞に値するものだったと思う。 全編通して、作品自体にも質の高さを感じたし、あまり抑揚がないテンポで展開しつつも、観る者を巧く引き込む語り口を備えていた。 ただし、もう少し主人公であるカポーティの心情を深く描きとる必要があったかもしれない。 主演俳優は独特のキャラクターの中で絶妙に押し殺した感情を表現できていたと思うが、描写自体がどこか軽薄な感じがあり、感情を移入することがあまり出来なかったことも事実。 カポーティという作家が、残虐な殺人事件を題材に書き上げたノンフィクション小説「冷血」。 そのタイトルが示すものは、殺人を犯した犯人のそれなのか、はたまた本を書くために事件とその犯人を冷静に見つめ続けた作家のそれななのか。 そういうことを考えると、単純に感情移入を許さず、その人物の本質を各々に見出すための余白を残した映画であるとも言える。 【鉄腕麗人】さん [DVD(字幕)] 6点(2009-02-01 11:10:04)
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