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《ネタバレ》 劇場シーンでのキャメラポジションが全く同じで、多少単調な気がしたのですが、やはり、オペラはこの映画の見せ場の一つで、小細工なしが正解ということでしょう。圧倒的でした。また、この劇場シーンでの音楽は劇場の外、次のシークエンスまでまたがって続き、例えばドアを閉める音やペンを走らせる動作など、劇場外のアクションとシンクロさせることで場面と場面をスムーズにつなぐ役割も担っています。もちろん、こうした音楽の使い方は実に映画的で、珍しくはありませんが、わざとらしさがないところはさすがです。長尺なのですが、こうした編集を多用することで物語がスピーディに運んでいます。結果的に、映画全編にわたってモーツアルトの音楽が流れているような錯覚に陥りますが、この作品において、それは本望でしょう。また、サリエリを演じたマーリー・エイブラハムの表現力も素晴らしい。話自体も分かりやすく、途中、何度か回想が切れ、年老いたサリエリが当時の心情を神父に語りますが、これがむしろ説明的に感じるほどです。ただ、このサリエリの告白をほとんど言葉を発せず、時には頭を抱えながら聞いていた神父の唖然として、驚きに満ちた表情は実に心に残りました。この神父はほとんど台詞もなく、ただサリエリの告白を聞くためだけに登場する人物で、その意味ではまさに映画の観客と同じ立場にいます。モーツアルトは天才、サリエリはそれを見抜く天才だとすれば、観客のほとんどがそのどちらでもない、神父と同じ凡庸な人間に当てはまるでしょう。そして自分自身もモーツアルトやサリエリの心情などはおそらくは理解できない、唖然とした、驚きの表情で、ほとんど言葉を発することができない凡庸な人間なのです。自分にとって、この神父が印象に残るのは、まさに押し黙るしかないこの神父に自分を投影したからにほかなりません。そしてこの困惑した神父の存在こそが、作り手の天才2人に対する敬意なのではないかと思います。
【スロウボート】さん 9点(2003-12-15 02:48:54)(良:2票)
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