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《ネタバレ》 高畑監督による力強い「生命賛歌」だと思います。ここには人が感じる喜怒哀楽や「生きる事の喜び」、そして「人に『生命』が与えられ、それぞれの生命を『生きている』」ということの根源的な不思議さや貴重さが、「自らの生を貫き全うすることの難しさ、罪深さ」というものも巻き込んだうえで、これ以上無いと思えるほどに高い純度で表現されていると思います。
劇中でのかぐや姫の「成長ぶりと月への帰還」、ひいては映画全体と二重写しにされているのは、まさに我々人間の「生と死の様相」そのものではないかと見ていて思いました。 人間に与えられた生命は余りにも短くはかないものであるにもかかわらず、我々はしばしば、「人は何のために生きているのか、そもそも生きるとはどういうことなのか」ということを見失いがちです。 そんな中、この映画は本来人間が持っているはずの「生きる事」の根源的な手触りというものを、繊細かつ奔放なアニメーション表現によって、とても鮮やかに観客に示します・・・と言うよりも、劇中あるようなあのアニメーション表現「そのもの」が、生き生きとした「生命感」の純粋な表現である、ということなのかもしれません。 エンドロールに流れる二階堂和美さんの歌は、情熱的な盛り上がりと共存するその静かさや真っ黒なエンドロールの背景も相まって、まるで将来闇に返っていく事を避ける事のできない我々の生命を、闇に灯る一筋の煌めきとして歌い上げるかのようです。そこに僕は同時に「死の影の静寂と冷たさ」(それは個人的には劇中ラストの、姫の月への帰還と重なるのですが)を感じる思いがしますが、そのような忍び寄る「死の影」をも含めて「人間の命」であるのだという事を、それまで見ていた生命感溢れる映画は同時に指し示しているように感じます。 そのような冷たい「死の感触」も含めて、我々は力を尽くして生きねばならないし、またそのように生きるに値するという、静かだがしっかりした思いを観客に残していく映画だと思います。個人的には、今はただただ「日本人で良かった」としみじみ思います。 【マーチェンカ】さん [映画館(邦画)] 10点(2013-11-24 19:21:31)(良:3票)
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