人間の條件 第三部 望郷篇 の fero さんのクチコミ・感想

Menu
 > 作品
 > ニ行
 > 人間の條件 第三部 望郷篇
 > feroさんのレビュー
人間の條件 第三部 望郷篇 の fero さんのクチコミ・感想
作品情報
レビュー情報
《ネタバレ》 この作品に対して、僕はとても悩んでいる。この作品が日本映画史に残る名作であり、俳優の熱演と、スタッフの努力と、熱い信念によって成された大作であることはわかる。戦争や民族差別という絶対悪に対抗しようとする一人の男。最初、紅い思想にその理想を求めるも、彼は気付く。そこにも彼の求めるものはない。重苦しい戦争の中で疲弊してゆく彼は、ただ、愛する妻の胸の中に戻りたいとだけ願い、死んでゆく。このプロットが素晴らしいことはわかるのですが、どうしても梶をあの正義感に走らせる原動力がみつからない。人が強くなるとき、それは宗教、思想、愛などいくつかあるだろうと思う。しかし、この映画の中の梶にはそれが見つからない。美千子への愛にしても、思想にしても、正義感に付随するもので、それはその原動力とはなりえていない。あえて言えば、一昔のハリウッド映画の主役のように、気は優しくて力持ち、頭がキレて正義感がある、理想化した英雄像に成り下がってしまっている。これが哀しくて仕方がない。この第三部では、家庭のいざこざと軍隊の厳しいシゴキに耐え切れずに自殺してしまう二等兵小原が登場する。彼の、自殺に追い込まれるまでの過程や、自殺の瞬間の悲哀はなんとリアルなことか。そして美千子と梶の一夜の逢瀬。美千子の裸を求める梶と、それに応えて泣く美千子の涙。素晴らしいシーンだと思う。 しかしながら、後半の吉田への憎悪、また丹下への投合の部分は、その描写の少なさから妙に違和感を感じるもとになっている。歴史的な大作にそれを求める事はいけないことだろうか?
feroさん 8点(2004-01-20 17:53:47)
fero さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2006-01-31六月の蛇6レビュー6.74点
2005-12-06ベーゼ・モア6レビュー4.09点
2005-06-27アララトの聖母5レビュー7.00点
2005-05-29テヘラン悪ガキ日記8レビュー7.25点
2004-12-28ネネットとボニー6レビュー4.50点
2004-12-24青い車9レビュー5.13点
2004-12-24いま、会いにゆきます9レビュー7.48点
2004-11-14忘れられない人7レビュー7.16点
2004-11-0120467レビュー4.78点
2004-08-14メルシー・ラ・ヴィ5レビュー5.50点
人間の條件 第三部 望郷篇のレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS