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昔、15分だけ観て、ああ、これはとんでもない作品だな、と、何だか怖くなって観るのをやめてしまった。数年越しで最後まで観切った時、あの時の予感は当たっていたのだと分かった。ネガティブで逆説的に言うならば、人間は生まれた時から緩慢に死に向かっている。あえて下手な希望や欺瞞などなしに言えば、人間はある意味においては、磨耗し、亡失しながら生きているんだと思う。色々な場所に、触れた所に、触れた人に、触れる度に、自分の欠片をちょっとずつ置いて来ながら生きているんだと思う。天文学的な程の数の微小な欠片をちょっとずつ失いながら。磨耗しながら。亡失しながら。大人になり生きて行くということは、ある意味においてはそういうことなのだ。そしてきっとある分水嶺を超えてしまったら、人間はもうどこにも戻れなくなるんだと思う。亡失と、磨耗と、夢の残滓と、まだ見ない対象への希望の転嫁。“ここではないどこか”=“パリ、テキサス”。求めた地に着いてなお、その地を知らず。そんな物語だと思った。身勝手で汚く、どうしようもなく不毛な物語。でもだからこそ、悔しいくらいに綺麗だ。
【ひのと】さん 10点(2004-08-30 22:47:22)(良:5票)
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