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正直、決して名作だとも傑作だとも思わないし、中盤は冗長で凡庸だとすら感じた。それでも、終盤になると「うーむ…」と考えることも多い。要するに、夢というものには3種類あるのだ。①睡眠時、脳内で起こる記憶整理作用の名称②「こうありたい」という希望、大志の別称③過去の遺物、幻影。消え滅んで行くものの比喩。この作品を最初は①の羅列だと思っていた。しかし、違った。導入部分は確かにそうかも知れない、しかし最終話には、「日本はこうでありたい」という焦燥感すら憶える程の静かながらも凄烈な願望とビジョンが見える。それは明らかに②だ。そして同時に、日本の良いものたち、昔日の美しいものたち、日本の美しい風景が夢と消えつつある、飛沫の様に、うたかたの夢のように消えつつある、という深い深い憂いも感じる。それは③だ。「歳を取ると夢を見ることが多くなる、それは若い頃の夢を見る為だ」という素敵な言葉がある。世界のクロサワだってそれは同じだろう。どこか、日本映画が1番素敵だった時代に生きた「つわものどもの夢の跡」のような余韻を残す作品。映像よりもその行間に重みがある。「こんな夢を見た」その一言が、億千万を語る。これは、クロサワの見た、夢だ。
【ひのと】さん 6点(2004-02-06 13:47:04)
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