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偏愛のある映画は素敵だと思う。自己愛に起因するそれは、ともすれば自己完結になりかねないシロモノで、全くもって危険物。そのギリギリのライン上にある、取り扱い注意な危険映画が好きだ。カラックスはそんなギリギリの危険人物で、時にはその境界線を越えてしまう。鼻に付く位のナルシストで、かっこつけ野郎で、取り澄ましてやがるけれど、溢れる偏愛を隠せない。そういう所に恥ずかしいまでの分かりやすい人間性も感じてしまう。どういう描き方、演出をすれば評価されるか、良い映画たり得るかを知っているし、計算出来る。でも描くものの本質は子供の絵。彼はずる賢い知恵を付けた子供なのだ。そういう意味で「神童」という言葉がとても似合う。そして滅茶苦茶な駄々っ子。当時まだ20歳そこそこだった大好きなジュリエット・ビノシュを、「やくざな中年男のやさぐれ情婦」にしてしまう。そんなの、好きな女の子をいじめてしまう小学生の男の子と一緒だ。とっても恥ずかしくて可愛い妄執。どうにもこうにも子供っぽい偏愛に溢れた素敵な映画。
【ひのと】さん 9点(2004-02-06 18:06:26)(良:1票)
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