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《ネタバレ》 「ジェボーダンの獣」&「ビーチ」&「ブレアウィッチ・プロジェクト」&「刑事ジョン・ブック 目撃者」を、1つにしたような映画だった。鑑賞中、どこかで見たことがあるシーン、味わったことがある内容、という思いがぐるぐるつきまとって離れなかった。それでも見てよかったと思うのは、この作品ならではの個性が確実に生まれていたから。犯罪の被害者たちが現実から背を向けてユートピアを造るという心理は切なく、またその世界も弱々しいものに見える。それなのに非常にまがまがしい。こうした摩訶不思議な空間を造りだしたシャラマン監督のセンスに惹かれた。そして、恐ろしくナンセンスな矛盾が興味深い。外の世界の人間を恐れるあまりに、内側にこもった人々が、架空の化け物を作り出して子供たちを恐れさせる。結局、恐怖政治で人心を操っているわけで、村に真の平安などは生まれない。だとしたら、「村」が造られた本来の意義も危うくなってくる。極論すれば、「何のために造られた村なのか?」というところまでくるのでは。それくらいならば、汚濁の中に身を沈めているほうが、かえって正直で、ゆがむことなく人生を送れるのではないだろうか。人間の本質は矛盾そのものなのだから、そこから目をそらしてユートピアなど造れるはずもない。北朝鮮の拉致被害者である家族会が非常にけなげで美しく、たくましいのは、悲劇から目をそらさず真っ向から大いなる矛盾と戦っているからだ。ラストでは、ノアの犠牲によって、村は存続していくとされているが、そうであるならば、たとえルシアンが助かったとしても、この映画はめでたしめでたし、どころか、悲劇の部類に入ると思う。アイヴィーの愛の奇跡は、恋人を救えても、村を開放させるほどの力はないということだから。
【tony】さん 8点(2004-09-26 13:40:13)
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