ノア 約束の舟 の tony さんのクチコミ・感想

Menu
 > 作品
 > ノ行
 > ノア 約束の舟
 > tonyさんのレビュー
ノア 約束の舟 の tony さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 ノア 約束の舟
製作国
上映時間138分
劇場公開日 2014-06-13
ジャンルアクション,ドラマ,アドベンチャー,歴史もの
レビュー情報
《ネタバレ》 ノアが神の意志をどう理解したかのプロセスが全く理解できない。子を産めないイラの身に起きた奇跡は神の御業、という解釈にならないのが不思議でたまらない。なぜノアが新しい命を祝福できないのか納得できなくて、始終イライラした。ノアの箱舟の物語に、アブラハムが愛息(イサク)を神に捧げる燔祭のエピソードを融合させたような印象だ。アンバランスなもやもやした気持ちを引きずりながら鑑賞した。

旧約聖書における「善」は、神への信心が最も優先されるのだろう。しかし、そのために他の命が二の次となり軽んじられるという世界観に全くついていけない。一神教とはそういうものなのかもしれないが、「約束の舟」と称されるこの乗り物は、一族の愛憎がむき出しとなり、流血沙汰まで発生した忌まわしき密室で、とても神の恩恵に満ちた神聖なる救いの場とは思えない。何より驚くことには、神へのゆるぎない信頼、感謝、平安、静けさといった心情をもつ人間が、この舟の中、誰一人乗っていないのだ。神に選ばれたノアですら、自分が神の思し召しに応えられるか不安と恐れと迷いで始終おののいている。この一族は、なぜ覚えめでたく神の目にとまって選抜されたのか、視聴中本当に理解に苦しんだ。ラッセル・クロウやジェニファー、エマたちの熱演が素晴らしいだけにストーリーが浮いていて、もったいなかった。

思うに、旧約聖書のスケールの大きな物語やその他の神話、おとぎ話などであまりにリアルな人間性を追究してしまうと、物語のあちこちで齟齬が生まれてしまう。船上にいる者と水中にいる者がいる以上、カルネアデスの板のような問題が起きるのは必至だが、そこを「良い人もいるから助けましょう」と現代風にセリフを突っ込めば、神は善悪のけじめというよりは増えすぎた民を滅ぼすホロコーストを行っていることになってしまう(実際この作品ではそう見えた)。『手塚治虫の旧約聖書物語』に採り上げられている箱舟のエピソードの方が、よほどすなおに感動できた。
tonyさん [インターネット(字幕)] 3点(2021-01-15 22:45:51)
tony さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2023-12-22ゴジラ-1.010レビュー7.49点
2023-05-24エヴェレスト 神々の山嶺5レビュー3.40点
2023-05-14轢き逃げ 最高の最悪な日8レビュー6.16点
2023-02-13メトロポリス(2001)6レビュー4.91点
2023-01-27JUNK HEAD8レビュー8.16点
2023-01-25LAMB/ラム9レビュー6.14点
2022-08-09竜とそばかすの姫6レビュー5.30点
2022-07-27キャラクター5レビュー5.14点
2021-08-12THE GUILTY ギルティ(2018)6レビュー7.20点
2021-08-07ナチス第三の男7レビュー6.20点
ノア 約束の舟のレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS