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《ネタバレ》 9歳の九太のがんばりがすごすぎる。
私自身、部屋にホコリがたまれば仕方なく掃除をしたり、またはサボったり、毎夕には家族の好き嫌いを考慮した料理を作っているのに残されたりして、また明日同じことの繰り返し、あー家事って面倒だなあと思っていたけれど、何かを吸収しようとして自主的に弟子としての雑用(家事)をこなしている九太には、ガツン!とやられた。これだけ身を粉にして働きながら、格闘技の技もちゃっかり磨いていく。しかも、ルーティーン・ワークがしっかり九太のメンタルを鍛えているのが観ていてすごくよくわかる。現実の世界に戻って来て、いきなりメルヴィルの『白鯨』を選ぶのは、いくらなんでも優秀過ぎると思ったけれど、好奇心の強い彼が楓を通してどんどん知識を吸収していく様は、見ていて清々しかった。目的をもって暮らすことの大切さを、まぶしいほどガンガン教えられた。 ただ、それ以外ではイライラすることが多かった。バケモノたちの豚鼻が気になって仕方なかったし、何よりキャラクターの名前がいけない。映画を観終わった後、HPで全キャラ名を見て改めてびっくりした。熊徹(くまてつ)はいいとして、多々良に百秋坊、猪王山に至っては、〝いおうぜん〟。無茶だよ。アニメだから、視聴者は当然耳からその名を知ることになるけれど、この発音で「いのしし」をイメージするのは無理。視聴中、キャラ名をほとんど知らずに物語を追っていた(あのちっちゃいモフモフがチコ・・・)。要するに、キャラ1人1人に思い入れることなく、話さえ分かれば十分だった自分に気がつき、少々呆然。 それにヒロインの楓。共感するのが本当に難しい。図書館で騒々しい級友たちを諫めることも、「暴力はよくない」とひと言入れることも、高学歴をめざして独り立ちする夢を持っていることも素晴らしい。でも、絵に描いたようなクセのない模範生。チャーミングなウィークポイントに乏しく、意外性が何もないから全然惹き込まれない。親の期待が大きすぎるって、そんなの進学校に通う生徒なら当たり前でしょ。 それから、多々良と百秋坊。要らないと思う。熊徹と九太の成長を実況中継するだけの存在。熊徹と九太2人だけで凸凹しながら意思疎通していけば、充分すっきりするのに。 それに、一郎彦。九太に斬られて、バケモノ界のベッドで目覚めて、・・・・・・何か成長していることになってる? それに、人間界とバケモノ界の時制が一致していて残念。九太が青年になって人間界に戻ったら、そこではほとんど時間は経っていなかった、くらいのズレが欲しかった。たとえば、再会したお父さんは成長した息子に驚愕していても楓にはその違和感がわからない、というちぐはぐさがあれば面白かったと思う。 最後に、武器は日本刀って・・・・・・なんか本当に恥ずかしい。何でここに日本色をわざわざもってくる必要があるのかわからない。せっかく異次元の世界が展開しているんだし、オリジナルの武器をデザインしてほしかった。 クライマックスの妖術によるマッコウクジラ戦は迫力満点で青い光が美しく、本当に見ごたえがあった。初めに東京の街のアスファルトを黒い巨体が現れたとき、『天使のたまご』に出てくるプロジェクション・マッピング張りの、建築物の壁面で泳ぐ巨大魚の既視感があった。あれからアニメーションの技術はこれほどまでに進化したのかと目を見張るものがあり、今でも何度も見なおしたくなるシーンだけれど、熊徹の情熱を表す赤い光が流れ込んできたとき、ぶっちゃけて言うと・・・・・・もう、本当にうっとうしかった。この美しい映像を、親子の熱い絆とかのベタなストーリーに絡ませてもらいたくなかった。日本版『ファンタジア』として、ただただ映像美に酔いしれていたかったなあ。 【tony】さん [インターネット(邦画)] 6点(2021-07-18 21:49:13)
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