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主演のメル・ギブソンと言えば、監督作品の「パッション」は大嫌いな作品の筆頭で、アカデミー作品賞を受賞した「ブレーブハート」は途中でつまらなくなって見るのを止めたほどなのでこの作品はどうかな、と思っていたのですが、人間の思考の厚さと深さを独白だけではなく体全体で表現するメル・ギブソンの演技は素晴らしかったです。ゼフィレッリ監督はオペラの映画化を多数手がけていて映像の美しさに定評があるので、彼の監督だと軽くなってしまったら・・・というのも余計な心配で、美しい映像は他作品と同じながら、俳優陣の演技とチームワークが重厚な作品を作り上げています。あの世にいるシェークスピアもこれなら満足ではないでしょうか。脇役ながら作品の質を決定するという母ガートルートと恋人オフィーリアの演技にも脱帽しました。ただ、父王の幽霊があまり怖くなかったのが残念でした。愛する息子の前に出るのだから生前と同じ温厚な姿で、というのは納得できないわけではないですが、昼間は地獄の呵責に堪え、夜になるとさ迷い出てくるのにはそれなりの理由があるのだから、四谷怪談並みとまではいかなくても、もう少し恨めしそうに出てほしかったので-1点とします。この役は初演ではシェークスピアが自分で演じています。ローレンス・オリビエと比較して本作品のメル・ギブソンには皇太子らしい気品が欠けていると感じる方がいると思いますが、シェークスピアが描こうとした「悩める道化」としてのハムレットが強調されているようです。ゼフィレッリとメル・ギブソンがオリビエ版を意識していないはずがなく、わざと違う解釈で作っているようなので、どちらが採るかは好みであって優劣はつけられないでしょう。「ケイト・ウィンスレットが好演ながらオフィーリアのイメージではない。」と言うコメントが複数ある1996年版は未見ですが、他配役が興味深いので是非見てみたいです。
【かわまり】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-07-09 01:09:29)
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