めまい(1958) の エスねこ さんのクチコミ・感想

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めまい(1958) の エスねこ さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 めまい(1958)
製作国
上映時間128分
劇場公開日 1958-10-07
ジャンルドラマ,サスペンス,ラブストーリー,ミステリー,小説の映画化
レビュー情報
《ネタバレ》 えー実は大昔、伝え聞きで「ヒッチコックの最高峰は『白い恐怖』やねん!」と聞かされてたモンで、こないだ期待バリバリで鑑賞してカックンとアゴを外してしまったオイラです。この度は入念なリサーチの上『めまい』の総合評価が高いのを確認。ヒッチコック山登頂を目指す覚悟です。

…あれ? ヒッチにしちゃえらく不気味なオープニングじゃないですか。序盤、主人公視点を巧く利用してますナ。最初の5分でサイコものだってわかりますね。必要以上に不安を煽る音楽、奥さんの奇怪な行動…およ? サイコものじゃねえぞ。この感触は断じて現代の精神不安系のストーリーラインじゃない。
これ、ゴシック・ロマンスじゃないですか! おなつかしや!
これを理解した瞬間、本作がどうして高い評価を受けているのか理解できました。映画におけるサイコサスペンスの登場は『サイコ』の登場を待たなければならないワケでして、『めまい』の時点ではこのジャンル自体が確立されていません。世間的にはこの時代、物語で《狂気》や《心の闇》を処理するにあたっては古い古い19世紀ゴシック・ロマンスの枠組みを借りるしかなかった上、このジャンルはB級ホラーの手垢でベタベタにされて「キ○ガイ博士がモンスターを作るために…」って枠組みまで退化(といって悪けりゃ単純化)していたんですね。
ヒッチコックは、イギリスの伝統ある物語形式を、歴史の浅いアメリカで蘇らせようとしていたんですな。ゴシック・ロマンスでは必須である《幽霊》は、偽装殺人というアイデアで合理的に出現させられる。霊界に魅せられていく男の姿は、現代の精神医学の知識で描写すれば、心のヒダの浅い(笑)アメリカの観客にも受け入れてもらえる。これは戦後に蘇った、懐古趣味抜きの一級のゴーストストーリーです。もっとも、ラストは異形の怪物の出現&悲劇で締めくくらなければならないのが、尼さん登場&ビックリ墜落になっちゃってますが…そんなとこまでお約束に忠実でいいの?

ついでですが様式化されて退化したゴシック・ロマンス…つまり「キ○ガイ博士モノ」をヒッチ流に咀嚼したのが『サイコ』だと考えると…いろいろ腑に落ちるトコ、ありませんか?
彼はオールドストーリーを再生する名人ですなぁ。
エスねこさん [DVD(字幕)] 7点(2006-08-16 01:39:23)
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投稿日付邦題コメント平均点
2019-10-14ジョーカー8レビュー6.85点
2017-06-12コードネーム U.N.C.L.E.6レビュー6.56点
2017-03-05インセプション9レビュー7.19点
2016-10-06君の名は。(2016)9レビュー6.97点
2016-08-10シン・ゴジラ9レビュー7.25点
2016-08-08理由(1995)4レビュー5.78点
2016-07-25ボーン・アイデンティティー7レビュー6.24点
2016-05-15ファースト・スクワッド7レビュー5.00点
2016-04-23マッドマックス 怒りのデス・ロード8レビュー7.72点
2016-04-17バットマン vs スーパーマン/ジャスティスの誕生8レビュー5.38点
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