急げ! 若者 TOMORROW NEVER WAITS の エスねこ さんのクチコミ・感想

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急げ! 若者 TOMORROW NEVER WAITS の エスねこ さんのクチコミ・感想
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《ネタバレ》 映画製作当時に観ていたら「てやんでェばっきゃろう!」となっていたはずの70年代アイドル映画も、これだけの歳月が過ぎれば冷静に評価できる。
この話は凄い。若大将シリーズの脚本家・田波靖男が製作/脚本というのが既にトリックのようなモノで、「こうあってほしいアイドル映画」をどんどんずらして行く。
孤児院を巣立った4人の若者が、それぞれに夢を見ながら厳しい社会で働き、歌を録音してはレコード会社へ送って…となると、その先の展開は決まりのはず。なのに、既に冒頭シーンから始まっていた微小な揺らぎが次第に大きくなり、サクセスストーリーと並行して不和・盗難・暴力団・ゆすり…と、無視できない規模になってフォーリーブスへまとわりつく。こんなアイドル映画はありえない。
大団円を期待する観客の心理を巧みに誘導する確信犯ぶりが素晴らしい。ラストでは見事に「歌手」と「歌」の相互に見つめ合う関係を絵に納めている。

シンデレラ物のお約束として、名のある人に認められるキッカケが必ずある。いわゆる現実とファンタジーの境界線を越えるエピソードだ。本作では自作のテープの放送を強行するため、ラジオ局に忍び込むシーンがそれで、ラジオパーソナリティとして二瓶正也が本人役で登場。この配役が絶妙で、「ウルトラマン」で誰もが知っている二瓶正也のマヌケぶりが見事にかぶり、ファンタジーへの境界線を知らぬ間に越えている。このラジオ放送を聞いてコンタクトして来る芸能プロ社長が、岡田真澄。真顔の濃い演技で、コミカルな色合いは消え、フォーリーブスの仮想空間は見事に確定する。

途中の展開で凄いナと思ったのは、疾走したメンバーを発見した感動の場面が、ミュージック・クリップ風に描かれて、ストーリーが消え去ってしまう部分。おなじみの手法だが、本作のは半端じゃない。歌と踊りに混じって撮影の合間のオフショットを入れる、練習風景を入れる、つまり物語は消滅して、この映画自身のメイキングフィルムに変わる。虚構の破れ目が覗くメタフィクションだ(このパートに対してもオチが用意されているのが凄い)。

アイドルを餌に、かなりの実験をブチ込んだ本作。実際のフォーリーブスの軌跡をたどると、あながちウソとも言い切れない部分があるのが、また恐ろしい。
エスねこさん [映画館(邦画)] 8点(2007-05-16 00:54:36)
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投稿日付邦題コメント平均点
2019-10-14ジョーカー8レビュー6.85点
2017-06-12コードネーム U.N.C.L.E.6レビュー6.56点
2017-03-05インセプション9レビュー7.20点
2016-10-06君の名は。(2016)9レビュー7.00点
2016-08-10シン・ゴジラ9レビュー7.24点
2016-08-08理由(1995)4レビュー5.78点
2016-07-25ボーン・アイデンティティー7レビュー6.24点
2016-05-15ファースト・スクワッド7レビュー5.00点
2016-04-23マッドマックス 怒りのデス・ロード8レビュー7.75点
2016-04-17バットマン vs スーパーマン/ジャスティスの誕生8レビュー5.45点
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