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《ネタバレ》 中一の頃、なぜか学級文庫に古い古い映画事典が置いてあり、そこに『カリガリ博士』のストーリー紹介が百枚近いスチルと共にストーリーボード形式で載っていたのです。おぞましく危うい展開に、何度も何度も読み返し、即夢中になりました。そんな若かりし頃から幾星霜。宿願かなってDVDが発売され、数年前にやっと鑑賞する事ができたわけですが…スチルの印象と大幅に違うのに驚きました。あの不思議なセットをバックに人々が動き回ると、シュールさがどんどん増して行くんですねー。逆に「絵」としては強烈だったチェザーレの逃亡シーン、郊外の田舎道は動画になるとイマイチでした。やはり建築物のセットの素晴らしさだと思います。
ストーリーについて。本作の公開された1919年は、パリ講和会議にベルサイユ条約の締結で第一次世界大戦に決着のついた年。無謀なベルギー越境作戦によって自ら大戦を始め、最後まで敗北を認めなかったドイツ。戦争に善悪はなく政治の延長線だと考えていたドイツ。戦後処理でダダをこねまくり、賠償金を値切ろうとし、連合国に「やりすぎだ」と噛み付いたドイツ。帝制を廃しただけで軍と官僚は責任を取らずにゴッソリ人材を温存したドイツ。『カリガリ博士』を見ると、国家と国民がメンタルに離れつつあったのを感じる事ができます。「院長は連続殺人鬼なんだ!」と叫べば拘束着を着せられ沈静房へ入れられてしまうドイツ人のやるせない状況。果たしてどっちが狂っているのか? …ほどなく歴史に登場するヒトラーが、あくまで主人公の側から出てきた人間である事を考えると、この作品はもう一段、深みと暗さを増してきます。 そして自国・我が身を振り返った時、政治と狂気の間に存在する「カリガリ的状況」に静かなため息をついてしまうのですな。最近のニュース、なんか前衛風の書き割りみたいに見えてきませんか? 【エスねこ】さん [DVD(字幕)] 6点(2005-05-09 21:43:09)(良:1票)
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