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《ネタバレ》 戦争を題材にしつつもウェット過ぎず、悪い意味での文学気取りもなく、ミステリーとしてもオーソドックスな作り。余計な気負いなしに、語るべきことを堅実に語ったという感じで、素直に楽しめた。
もっとも印象深いのは、真犯人を棺に閉じ込めたあと、ラヘルら二人が呆けたように湖のほとりに佇む場面。悲鳴が止んだときの「永遠に続くかと思ったわ」という、復讐のカタルシスよりも徒労感の滲んだ台詞が忘れ難い。 初めはナチス相手の戦いだったのが、やがてナチ将校に恋をして、味方のはずの英米軍に虐待を受け、最後には同胞を敵として殺す。善悪の境界も混沌とした極限状況でここまで振り回されたら、そりゃ疲れ切るよなあ、と思う。大昔のアメリカ映画ならナチ=絶対悪の単純な形式でしかなかったのが、ヴァーホーヴェン監督には我慢ならなかったのだろう。事実あの時代を公平に見れば、白黒のつけにくい複雑な状況がいくらでもあるのだから。 ムンツェが告発される場面で、裏切ったドイツ軍人が「この男は保身のためなら平気で嘘をつくのです」という台詞がある。それに応じてカナダ人(だっけ?)将校が「誰でもそうだろう」と平然と応じる。ヴァーホーヴェンの冷めた人間観があの台詞に凝縮されているように思った。 【no one】さん [DVD(字幕)] 7点(2007-09-20 01:42:19)
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