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《ネタバレ》 さながら残虐行為のショウケースだ。映像的にグロいというより想像するだに痛そうな、精神的にきつい手口ばかりを並べたててみせる歪んだ想像力には、ある意味感心させられた。事前にネタがわかっているとそう衝撃的でもないが、後半の筋書きの秀逸さは確かで、自分だったらこんな脚本は逆立ちしても考えつかないだろうと思う。
ただ、ケヴィン・スペイシーの演じる殺人犯ジョン・ドゥにはあまり凄みを感じられなかった。ハンニバル・レクターよろしくカルト宗教の教祖的な性格を持った連続殺人犯だが、レクター博士の場合は徐々にこちらの精神を侵食してくるような底の知れない恐怖があったのに比べると、ジョン・ドゥは単なる誇大妄想狂としか感じられない。会話の通じないアホといってしまえばそれまでのような気がする(こんなやつにミルズ刑事のような一般人が操られてしまうからこそ怖いのかもしれないが)。 この手の殺人者が怖いのは、単純に危険だからというだけではなく、ノーマルな側であるはずの人々が、知らず知らずのうちにその異常性に惹きつけられている部分があるからだと思う。純粋な脅威としての殺人者を恐れているのではなく、殺人者のなかに自分自身を見てしまうからこそ怖いのだ。その点、ジョン・ドゥは完全に理解の範疇外にあり、怖いというか鬱陶しい。結局お前はなにがしたかったんだよ、と言ってやりたくなった。あるいはキリスト教圏の人であればまた受け取り方が違ったのかもしれないが。 ここでの高評価につられて再見してみたものの、自分としては繰り返し鑑賞したいと思えるほどではなかった。二人の刑事が胸毛を剃りながら「乳首を切り落としたら労災が下りるのか?」なんて話をする何気ないくだりのほうが、クライマックスよりかはむしろ楽しめた。ブラッド・ピットのかっこよさを再確認できたのが、最大の収穫だろうか。 【no one】さん [DVD(字幕)] 7点(2009-12-25 15:34:06)
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