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勢子さんにあげるための香り袋を綾が手にとるシーンで、次に出る台詞がわかった――「これ、あたしにちょうだい」。思わず苦笑した。いかにも女性らしい言葉、いかにも女性らしい逞しさだと思う。生島の弱さを見透かして心中をやめたのにもかかわらず、他の女への贈り物を取り上げる。そこにちょっとは嫉妬というか、生島に自分を最優先させたい気持ち、支配欲のような気持ちが働いていたと推測する。もしかしたらただ単にほしかっただけなのかもしれないが、それにしても、あの台詞から感じる逞しさとずうずうしさ、そしてちょっと可愛いらしい感じが、いかにも女の強さだと思った。
最終的には兄貴に売られて博多に行くことを選んだ彼女の姿を生島は間抜け面で見送ることしかできない。綾はあんなにどうどうとしてるのに(強いよなぁ、そりゃ刺青入れられても悲鳴あげないわ)。 主人公はとんでもなくだめ人間で、綾の存在でその弱さがいっそう際立った。でも最後に少年の日に追いかけた蝶々を見つけたのは、彼が再び生きる意志を抱く象徴だったのだろうか? 綾に出会うことで極楽の鳥たる蝶々を見つけて、もう一度それを追いかける道を選んだのだろうか。それとも結局、蝶々を捕まえることはできないということだろうか。前者であってほしいと願う。とことん情けない主人公だったが、あんなに強い女性に出会ったなら、さすがに目を覚ましてもいいんじゃないかと思う。頑張って生きてみてもいいんじゃないか? 心中は未遂に終わったんだから。 【no one】さん [DVD(字幕)] 8点(2005-06-13 11:36:01)(良:1票)
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