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トレードマークというべき相変わらずのタッチ。寛容に受け取れば、『ボーン』シリーズなら主人公の俊敏さ・機敏さを強調し、『ユナイテッド93』なら乗客の動揺と切迫感を表象する手段でもあり、本作でいうなら現場の混迷と混乱の状況を示すといったところか。主人公は政治状況・組織関係の混迷(大状況)と、迷路のような異郷の夜の路地(局地状況)をひたすら奔走する。それは良いが、バス停留所の件りになるともはや視点が拡散しすぎで、位置関係の把握どころではない。こうなると、サスペンスとしては辛い。撮影途中のフォーカス修正や、高速ズーミングなどの誘導的細工で擬似即興感づくりに勤しむ一方で、映画の「嘘」を敢えて露呈させるようなリバース・ショットは盛んに入り混じり、各キャラクター造型は単純明快で非リアルであり、結末は能天気なほどファンタジックでありと、見事に社会派臭を払拭している。政治性を牽制する戦略も抜かりなし。陸橋の崩れた街道を俯瞰するロングショットや、夜の路地を徘徊する野良犬、義足を外され片足飛びするイラク人など、個々には眼を引くショットも多い。
【ユーカラ】さん [映画館(字幕)] 4点(2010-05-18 20:55:13)
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