エッセンシャル・キリング の ユーカラ さんのクチコミ・感想

Menu
 > 作品
 > エ行
 > エッセンシャル・キリング
 > ユーカラさんのレビュー
エッセンシャル・キリング の ユーカラ さんのクチコミ・感想
作品情報
レビュー情報
《ネタバレ》 映画は映画であれば良い。読書ではないのだから。メッセージ(「いいたいこと」)やテーマを伝えたければ論文を書けば良いだけのこと。

文科省の読書感想文による主題論教育に従順に馴らされてきた者は一般的に映画においても画面を味わうことを知らず、まずテーマを読みたがり、そしてそれが自分の理解の範囲を超えたとたん、「芸術」を逃げ口上に使う。よって純粋な活劇はなかなか理解されることがない。


雪の白に擬態し、罠に嵌った犬を囮に使い、木の枝や蟻を齧り、崖から滑落する。
『ランボー』のサバイバルアクションを髣髴させつつ、その『ランボー』がラストにおいて嵌った饒舌な内面心理や社会性といったものも見事に削ぎ落としている。

言語も記憶も時制もことごとく排除され、生物の一次欲求だけが活劇を駆動していく。

代わりにその静寂のラストに訪れるのは『バルタザールどこへ行く』を連想させるような冷厳さだ。
右肩部分に血痕の付いた寡黙な白馬は、主人公(ヴィンセント・ギャロ)が野生へと転生した姿か。

回想シーンの幻聴や様々な状況音(ヘリの爆音、チェーンソー、犬の咆哮など)そして台詞の代わりに主人公の口から漏れる呻き、吐息、咀嚼音といった要素に意識を向けさせられるのもブレッソン的だ。

馬・鹿・犬たちの佇まいと躍動が素晴らしい。特に、ギャロの周囲に群がる犬の集団アクションは圧倒的なスペクタクルである。
ユーカラさん [映画館(字幕)] 9点(2011-09-19 18:14:36)
ユーカラ さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2024-02-14キリエのうた2レビュー6.00点
2018-03-11坂道のアポロン5レビュー6.00点
2018-02-28シムソンズ7レビュー7.41点
2018-02-28空海 KU-KAI 美しき王妃の謎5レビュー4.85点
2018-02-25リバーズ・エッジ5レビュー5.33点
2018-02-24キングスマン: ゴールデン・サークル7レビュー6.40点
2018-02-18グレイテスト・ショーマン9レビュー7.36点
2018-02-18羊の木7レビュー6.00点
2018-02-18マンハント(2017)5レビュー4.70点
2018-02-07不能犯5レビュー4.33点
エッセンシャル・キリングのレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS