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レビュー情報
シンプルにしてスリリングな力に満ちた労作である。
パペットの衣類の質感やアニメーション技術の細やかさもさることながら、 仰角と俯瞰のキャメラアングル・照明効果による陰影のつけ方の見事さが光る。 壁や階段やドアなど、何気なくありふれた空間をいかに禍々しく演出するか。 そうした異世界の画面づくりに払われた真摯な努力こそが胸を打つ。 炎のスペクタクルの中、『ターミネーター』のワンシーンのように 人形の首がポロッともげるカットの不気味な生々しさ・凶々しさ。 本作を第三回下北沢映画祭グランプリに推した黒沢清監督もまたやはり このカットに「やられた。」と語っている。 全てが作り手によって制御されているかに見えるパペットアニメーションの中で、 炎や煙といった制御不能な運動がクライマックスの画面を覆うと共に、 その首が転がる運動が、監督すら予期しなかっただろう独特で生々しい一瞬間を 捉えているからに相違ない。 作り手にとっても不測の事象が生起する瞬間の、映画の美である。 秦俊子監督は、本作品の中で説明や根拠付け・動機付けを一切排除し、 無意味・無心理に徹すること、そして純粋に恐怖のエモーションを 創出することのみに賭けている。 「映画が単純に映画であること」その潔さと倫理性。 かつて黒沢監督の『地獄の警備員』を評した上野昂志氏の賛辞を思い起こす。 【ユーカラ】さん [映画館(邦画)] 9点(2013-04-29 06:53:41)
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