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優れた映画話法が満載であり、オーヴァーラップの使い方一つとっても洗練の極み。冒頭の小さな迷い猫が居つくまでを簡潔に示す繋ぎ。赤西の恋文書きの微笑ましい苦闘ぶりを紙くずの山によって示す繋ぎ。奥女中である小波からの返信の文面から二人の並ぶイメージショットへの繋ぎ。小波が赤西の来訪に喜び慌てる様と、衣類の散乱した部屋のショット、そこから客間で畏まっている赤西と小波たちの構図への繋ぎ。そしてさらに赤西の長居を示す三段階の繋ぎetc。これらの特長はそれぞれ単なる時間経過表現や、省略という機能にとどまらない。猫の場面ではその肥え太った貫禄ぶりがユーモアを醸し出すと共に赤西の面倒見の良さを、衣装をとっかえひっかえした後を示す部屋と畏まって正座する小波との対比では彼女の内面の動揺と喜びが描出される、といった具合に簡潔明瞭なキャラクター描写ともなり得ている。その上、類似した構図のショットを溶け合わせているので一瞬たりとも画面の安定と調和が崩れることがない。見事な画面連鎖である。
【ユーカラ】さん [映画館(邦画)] 9点(2008-12-14 18:13:52)
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