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《ネタバレ》 全く変わらない浩一の衣服、飲み物はいつも同じお茶、自家用車移動シーンの車外風景、胡散臭い口調の女医。『リアル』と題された物語の中に挟み込まれる、不自然な風景の数々。初めは些細な違和感でした。しかし、粉雪のように降り積もった疑惑は、次第に大きな胸騒ぎへと変わってゆくのです。これぞ黒沢清流スリラーの醍醐味。一度懐疑的になると、何気ないワンカットに至るまで、真相に繋がる重要なヒントに思えてきます。ホラー描写も膝を打つ出来栄え。突如現れる変死体(特に最初の縛られた女は、タイミング、造形共に絶品)、なんちゃらゾンビの色味の無い蝋顔。ホラー向けのエフェクトはこう在るべし、と考えます。人物背景の空間の使い方も、相変わらずセンスが良いです。やはり黒沢清監督のサスペンスホラーは、一味違うと感じます。この観点では、十分に満足のいくものでした。ただ、黒沢ブランドのもう一つの大看板“難解映画=考えさせる映画”という点では、些か物足りなかったかもしれません。丁寧な種明かしは、大衆映画としては正しい在り方なのでしょう。しかし物語の余白を埋める確定作業ゆえ、ミステリーの浪漫には欠けます。『カリスマ』や『回路』のように戸惑う観客を置き去りにするくらい、難解で重厚な映画を黒沢監督には期待したいのです。やはり原作小説モノではなく、オリジナル脚本で勝負をお願いします。黒沢常連組の役者さんは相変わらず“心得ているなあ”という役作りでありました。
【目隠シスト】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2014-11-30 19:25:13)
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