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《ネタバレ》 キーワードは言わずもがな「生死の堺」です。教授にこの概念を問われた主人公は意識の問題と答えました。死んだ瞬間意識が無くなるから考えることに意味は無いと。デジタル的に1と0の関係と言い換えても良さそうです。おそらく無神論者(私も含む)の一般的生死感もこれでしょう。しかし本作では生死の堺が存在しました。それがN号棟。イメージとしては淡水と海水が混じり合う河口付近。アナログ的に捉えるなら1から0になるまでの途中の領域と言えましょう。
さてここで疑問が湧きます。なぜ主人公ほか2人はこの境界に入り込めたのかということ。N号棟は社会的には廃墟として認識されている場所です。住人は居ないはず。にも関わらず生活していた人たちは何者?死者でしょうか。あるいは生者だけど極めて死者に近い存在なので、通常は(社会的には)認識されない状態とか。いずれにしても普通の人は彼らに気づけないのだと思います。そこで物語序盤を思い返してみましょう。主人公は教授から飲み物をご馳走になっていました。N号棟住民から提供されていたマグカップと同じマグカップで。中身は「死にゆく者から搾り取った血」と推測します。生死の堺にいる者の血を摂取することで、境界に入りやすくする効果を得たのではないかと。男子学生にN号棟へ行くよう唆したのも教授だったと考えると辻褄があいます。教授の企みに学生はまんまと嵌まったわけです。 結末について。何時でも逃げ出せるチャンスがあったのにN号棟に留まった主人公にイライラ。結果、命を落としました。しかしあのまま逃げ遂せたとしてもハッピーエンドと言えるのかどうか。主人公は「死恐怖症(タナトフォビア)」に悩まされていました。もしN号棟の住人として、これから安らかな日々が送れるのだとすれば、これもひとつのハッピーエンドと捉えられるのかもしれません。N号棟のNとは代数のN。あなたのそばにも生死の境があるに違いありません。 ご指摘のレビュワー様もおられるように『ミッドサマー』を彷彿とさせる世界観で、独特の雰囲気がありました。それでいてきっちりオカルト。演出も冴えていたと思います。邦画ホラーの中では当たりの部類と判定します。何より筒井真理子さんの存在感が抜群。ベストキャスティングでした。 【目隠シスト】さん [インターネット(邦画)] 7点(2023-01-12 19:15:35)(良:1票)
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