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レビュー情報
《ネタバレ》 元服はおよそ15歳。高校卒業なら18歳程度。「巣立ち」は重要なライフイベントのひとつですが、大学進学が過半数の現在そのタイミングは概ね「後ろ倒し」となっています。主人公は24歳。巣立つ年齢として遅くはないですが、彼女はすでに社会人でした。普通なら当該イベントは終了済みのはず。しかし彼女はまだ巣の中に居ました。
タイトルにある「メビウス」とはご存じ「メビウスの輪」のこと。進んでも元の位置に戻る特殊構造を、進路が定まらず停滞している現状に喩えています。また主人公が好意を寄せるイケメン帰国子女エイト君も8を横にしてメビウスです。よってタイトルは「足踏みしている現状とイケメン彼氏から抜け出せ!」という意味です。因みにエイト君パパ&ママのキャラクターは完全に「アメリカンホームドラマ」を揶揄しており、その会話劇は作中随一のお笑いポイントとなっていました。皆さん一緒に「欧米か!」と突っ込んでみましょう。 「全て母親に従って生きてきた」この思いが主人公の自立を阻む根本要因です。彼女自身でそう分析済み。ですから主人公に必要だったのは「自分で決める」という経験でした。本来ならアドバイスを参考に「決断」すればよい話ですが、精神的に未熟だと「従った」のか「自身で決めた」のか判別出来ません。でもアドバイスに反する選択であれば「自分の意思」と実感できるでしょう。往々にしてこの論法により若者は間違うのです。主人公の場合も同じ。彼氏の選択を誤りましたし、たぶん大学受験も・・・。しかし繰り返しますが重要なのは「自分で決めること」です。結果より過程。これは結果が全ての現実社会と正反対の案件。だから物語も受験の合否を見せません。必要ないから。そもそも人生の正解なんて何でも知っている神様でもない限り分かるものですか(あれ?でもカウンターに神様が居ましたか??)何なら誤答を正答に変えるのも自分次第だったりします。だから人生って面白い。 母親は正しく母親でしたし、娘の振る舞いも何ら問題ありません。「このままだと行き詰った時、お母さんを言い訳にしてしまう」と理解しているなら大丈夫。勉強は出来ないかもしれませんが賢い子です。全ては人生を悔いなく終えるために。どうぞ沢山足掻いてください。なお母の言葉「自分のコンプレックスを好きだと言ってくれる人と結婚しなさい」は金言なので、しっかりと心に留め置くと良いでしょう。個人的には元彼に100回土下座をすればよいと思います。彼以上の伴侶を見つけるのは東大合格より難しいでしょう。 巣立ちのドラマとしては大してドラマチックではありません。また主人公のキャラクターも俗物的です。でもだからこそ「自分ごと」として捉えられるのでは。冒頭で「社会人なら巣立っていて当たり前」と書きましたが、本当はそんな事ありません。経済的にも精神的にも自立するのは大変なこと。ある意味「自立しなくても生きていける」のが今の日本社会とも言えます。 多様性の時代ではありますが、ライフイベントには適齢があり順番があります。少なくとも母親はそう考えているでしょう。だから反抗する娘に対し諦めたように「好きにしなさい」と言ったのです。これは「後悔しないのであれば好きにしなさい」という意味。見放したわけでも何でもなく本心だと思います。私も我が子に対して「幸せになって欲しい」と同じくらい「なるべく悔いなく生きて欲しい」と願っています。 【目隠シスト】さん [インターネット(邦画)] 7点(2024-09-02 18:22:01)
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