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《ネタバレ》 当時の雰囲気を現代の若者にも伝えようという努力のせいか、少し長くなりすぎた嫌いはあるが、登場人物一人ひとりの心の動きを丁寧に描いて味わいのある佳作。妻夫木聡も松山ケンイチも演技派の名に恥じない好演を見せている。
何よりも面白いのは、この映画が全共闘時代(1970年頃)の若者の狂騒を一歩引いたところから批判的に描いていることだ。映画業界の人(というかマスコミの人やら芸術家やら全般)はリベラル寄りの人が多いから、どうしても「青春のあの頃」を描くと自分達に甘くなる。マルクス主義に傾倒し、小難しい議論を延々と繰り返し、警官と衝突し、タバコをふかしながら青春を謳歌していた自分達を正当化したがる。「俺たちは真面目に政治のこととか考えて行動してたぜ。それにくらべて今の若者は何事にも無関心だ。熱い思いが無い」などと説教を垂れたがる。僕はそういう輩に対してずっと疑問を持っていた。本当に彼らがやったことは正しかったのか?若者はみな理想に燃えて高潔だったのか?彼らの闘いは未来を変えたいという真情の発露だったのか? この映画を観て分かった。彼らとて聖人君子では無かったのだ。学生運動とは、現代ほど娯楽の無い時代に生まれた彼らにとっての「娯楽」だったのだ。スリルを得るためのゲーム、やり場の無い暴力のはけ口、そしてモテるための手段でもあったのだ。この映画が出色なのは学生運動の暗部である、彼らの虚栄心、党派心、虚無感、卑怯さ、そういうものを公正に描いていることだ。 もちろん、中には本気で革命を信じて闘った学生運動の「良心」ともいうべき人もいただろう。それが「正しかったか」はおいといて。この映画では長塚圭史演じる唐谷義朗がそれに当たる。でも、当時の学生全員が本気で社会を変えようとしていたわけではなかった。ラストで涙に咽ぶ沢田(妻夫木)は何を思ったのか。自分の青春時代を肯定することもできず、かといって否定しきるのもつらい。精神的な葛藤の末に流された苦い苦い涙だ。当時を体験していない山下監督だからこそ撮れた作品だと思う半面で、当時を生きた世代がこれを撮れなかったのは愧ずべきことのようにも感じる。 エンディングの真心ブラザーズ+奥田民生によるボブ・ディランの「My back pages」のカバーも良かった。「あのころの僕より今の方がずっと若いさ」。過去を反省する勇気を持ち続けていたいものである。 【枕流】さん [映画館(邦画)] 8点(2011-06-08 23:31:24)(良:1票)
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