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この映画は三部構成になっているのだが、全体を通じて長いことは否定できない。特に結婚式~披露宴兼出征パーティ~鹿狩りと続く第一部は特に長い。しかしながら、この部分がその後の展開のキーとなる部分であり、この長さは削るわけにはいかない。この部分で、その後のストーリーに関わる多くの伏線が張られているというわけではない。鹿狩りで鹿を追い詰めたときのマイケル(デ・ニーロ)の態度は第三部への伏線になってはいるが、その数は決して多くはない。それにもかかわらずこの映画においては、第一部が最も重要である。
観客は第一部で「彼ら」と同化することができる。「彼らの中の誰か」と同化するわけではない。ピッツバーグ近郊の製鉄会社に勤めるロシア系移民の若者たちの生活環境を体験し、その考え方を骨まで叩き込むのである。彼らの興味や嗜好まで理解し、彼らと共に鹿狩りに行くためには、第一部の長さではむしろ短い。第二部以降の有名なロシアン・ルーレットのシーンの迫力は確かに凄まじいが、僕はこの映画の魅力は第一部にあると感じる。 第二部以降は話の焦点がマイケルとニックだけに合ってしまうのだ。この二人の対比は戦争から受けた影響の相違という点においては確かに興味深い。彼らの演技も素晴らしく、二人が対峙する第三部のシーンは一生忘れられないほどの緊迫感に満ちていた。出征の前までは、どちらかというと直情径行的で少年のような不安定さを残していたマイケルと理知的だったニックに、精神的にどのような変化が起きたのかを考えながら鑑賞すると実に面白い。終盤のニックの行動に唐突感を覚える人もいるようだが、僕はむしろ共感を覚えた。だが、この映画は群像劇にすべきだったと僕は思うし、それがうまく機能していない(一部の登場人物にシーンが偏りすぎる)印象がする後半の展開は残念だった。 もちろん、見所はいくらでもある映画だが、完璧に近い作品なだけに、宝石の些細な疵が気になるような少し嫌な後味が残ってしまった。 【枕流】さん [映画館(字幕)] 8点(2011-08-15 23:57:29)(良:1票)
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