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ワルツが久しぶりに鳴った。偶然の出会いを仕組むあたり、本シリーズでは珍しくはないもののやはり笑える。蛍子の親父さんが「こんな奴と付きあってんのか」というとこも笑った。とらやでの画面の作りはもう熟達の境地。すみずみまで無駄がない。左側に怒ったオイチャンがいると、右側に泣いているオバチャンを置いて釣り合いを取り、話が一室に籠もりそうになると、オイチャンのとこに人が来たりして、店から三郎に挨拶を送る場面を挟んだりして息を抜く。流れが出来る。このころから寅はよくマドンナの恋の相談相手になる。寅は結婚してないから理想が言える、ってことで、ヒロシの言葉を借りると「それが欠点でもあり美点でもある」。けっきょく寅は人生の通過者であり続けようとしたわけで、人生の転換点を乗り越えることが出来ない人なの。ある意味臆病、よく言えば永遠の青年。だからほかの人が乗り越えようとするとき助言を与えるのに熟達している。『太陽を盗んだ男』などニヒルな役が多かった沢田研二に、気の弱い動物園の飼育員をやらせたのが慧眼で、上方のボンボン的な資質を見抜いていた(鳥取生まれの京都育ち)。後年沢田は舞台で「夫婦善哉」をやることになる。
【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 7点(2012-06-14 10:13:09)(良:1票)
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