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たぶん私は仁侠映画は、その時代色を楽しめるところも好きなんだろう。街のさざめきなどの気配、丁寧な小道具、そういったところにうっとりしてしまう。ああいった小道具を適宜に配置できる能力は、ちゃんと伝わっているのだろうか。本作最後には凌雲閣が登場する。画面の特徴では、手前に何かがあるカットが多い。つまり奥のほうで捉えるのが好きみたい。手前に娘、その奥で顔をもたげてくるお竜、この二つの顔の重なり合い。悪玉がアラカンにイチャモンつけるときの奥のお竜。あるいは娘との再会シーンの据えっぱなしの長回し、奥のお竜がハッとして前面に出てくるの。仁侠映画はワイドの画面を一番生かせたジャンルだと思っているんだけど、それは相対する距離を十分に取れるところ、横に広がる儀式の場や賭場のシーンで、舞台のような広さがちょうど合っている。でもこういった奥への展開も合わせ持っているから、さらに画面が豊かになってるんだな。今戸橋のシーンでも、画面の右手に橋を大きく埋めて、左の隅っこで二人を立たせる。するとそこに密やかさも加わってくる。倒れたアラカンのずっと向こうを傘を差したのが通り過ぎていく。この「奥」の感じと、ぐっと手前でほとんど人物の足元からあおる感じとが対比される。とにかくワイドの画面に無駄が全然感じられない。加藤泰お気に入りの任田順好は「役を降ろされた女優」の役で、例のごとく怨みの人を好演。若山富三郎は好きな役者だが、このシリーズでの熊虎については判断留保。安部徹はホントきたない野郎だ。
【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 8点(2010-10-02 10:15:47)(良:1票)
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