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《ネタバレ》 初めのうちは事柄の絵解きのような画面が延々と続き、それに安っぽい音楽も付いて、こりゃ大変なものを見始めちゃったかな、と心配してたのが、山に入ると引き込まれ、その映画としての「洗練されなさ」が異様な力を持ち、グイグイと終わりまでいってしまった。不思議な映画体験だった。不必要なところで英語のバラードが流れたりして、どうしてそういうことするの、と頭の片一方で怒るんだけど、そういう粗っぽさを全部肯定したい気持ちのほうが先に来る。粛清の嵐のとこが一番のめり込む。彼らは少なくとも唯物論の共産主義を信奉してたはずなのに、その彼らが、かつての精神主義で固まった帝国軍隊のミニチュアに見えてくるあたりの滑稽と戦慄。訓練のとき、バーンと言う発射の声が小さい、と怒鳴る。銃に傷を付けたのが重大な失態になる。“神聖な”党を汚した、と自己批判を迫る。「総括」という輪郭のはっきりしない言葉が、万能の力を得てしまう。かつての「天皇」を「革命」に替えただけの精神構造。これはいったい何なんだろう。日本人固有の体質的傾斜なのか、それとも人間の閉じた集団があるところ、どこにでも起こりうる病いなのか。犠牲者を生み出すことだけで維持される組織。その構造が発生するメカニズムの分析までは映画では出来なかったが、しかしそれを観察する体験だけでも貴重だった。映画『光の雨』では、現代の若者との落差といった話で逃げてしまったところを、今回はじっくり見せてくれた。あさま山荘の中でもまだ、クッキー食べたことで自己批判を迫ったりしてたんだなあ。
【なんのかんの】さん [DVD(邦画)] 7点(2009-05-17 12:10:01)
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