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「今日の銃殺より明日のガス」ってセリフは記憶に残るな。たとえそれが利敵行為と分かっていても、とりあえず今日の銃殺を避けようとするもんなあ。まして職人気質をくすぐられれば、歴史に残る贋札を作りたいと思っちゃう、そこらへんの「分かっちゃいるけどやめられない」の心理がナマナマしかった。『戦場にかける橋』で、つい捕虜たちが立派な橋を作りたくなった心理と同じだ。長期的な視点を持てないのではない、分かっちゃいるけど、現在の切迫がそちらの目を塞ぐのだ。歴史はこうしてクネクネと、理想へ直線的には動かないようにできてるのだな。ナチが悪役笑いするのには閉口。ナチの怖さは人格の卑しさから来るのではない。いたって有能な人物たちが、合理的思考に基づいてガス室の発明にまで至ったところにその怖さがある。この映画でだって、ユダヤ人の職工を使えば後始末が簡単、と合理的に考えるところが一番怖かった。よくナチと日本軍は同一視されるけど、どっちかって言うと対極にある。ナチは合理主義のバケモノ、日本は精神主義のバケモノだった。あっちは無駄を病的なまでに排斥する狂気、こっちは無駄が出れば出るほど気合いが入ると思い込んでいる狂気。
【なんのかんの】さん [DVD(字幕)] 6点(2009-01-17 12:09:46)(良:2票)
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