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小市民の哀歓を、いや“歓”がなくて“哀”のみの世界を描いて、しかしイデオロギー的な怒りにはならず、あるのは純粋な“幻滅”、こういう幻滅や断念によって我々の社会は動いているんだなあ、という発見に胸を衝かれる。ハリウッドの成功物語の対極のような映画。だが庶民が傷をなめ合っているような卑しさはかけらもなく、毅然とした芯がある、毅然と幻滅を受け入れていく。考えてみれば世界的に見ても、こういう日本の庶民映画が娯楽として成り立っていたのは、かなりユニークな事例ではないだろうか。姉の久我美子の現代っ子ぶりが、やや戯画が大振りになっていたが、あとは実に丁寧で、横丁の狭い魚臭い場所から高台に暮らす少女へ憧れる、という地理感覚も正確(東京の馬込だったか)。そして妹との別れのエピソードだ。木下は移動撮影に心象を重ねるのが実にうまい人だが、ここでもロングの横移動が哀切きわまりない。
【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 7点(2009-05-10 12:17:22)
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