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《ネタバレ》 岸部一徳に「あんた見てるとタダで弁当配りそうだ」と心配させる小西真奈美のキャラクターがピタリ合ってる。真剣になるとおかしくてかわいい。弟子入り志願のとことか、夫とのケンカのとことか、絶対演技過剰なんだけど、なんか彼女だと許せてしまう。そうそう、あとホテルの駐車場で息を確認するとことか。料理の才があったというのは、つまり彼女が家庭の人だったということで、問題は自分の才能が金銭に換算され得るという可能性に気がつかなかったこと、あるいは金銭を請求する交渉から逃げていたということ。ああそうか、昔の時代劇ではよく深窓の姫君が身をやつして町に入りシモジモの暮らしを体験するってのがあったが、あれとどこかでつながってるな、この話。ヒロインの「子どものような手」は姫君の手でもある。それは金銭を請求する手にならなければならない。旦那に慰謝料を請求せず、岸部一徳にはタダで働かせてください、と叫んだり、下町江戸っ子のきっぷのよさ、ってのは、どこか「まだ子ども」ってところがある。最初の保育園で配った弁当代は向うからやってきた、岸部に労働代の封筒を提示されてから「お金下さい」と言った、自分はお姫様のままだった(言っただけでも進歩)。だからラストは本当なら、「お弁当、おいくら」と尋ねられて、値段をはっきり言うセリフでカットってのが正解だっただろう。彼女の将来、前途洋々には見えないが、一緒にハラハラしてやろう、というぐらいの気にはさせる。最初、町に帰ってきたヒロインをおばさんたちが騒々しく取り囲む場で、うるさい下町人情ものなのかと心配したが、そうではなくあれは下町の鬱陶しさを描いていたのだった。本当の「下町の人情」ってのは、岸部がハラハラしながらも見守るところに出ている。写真館がやっていけなくなる今現在の下町の厳しさもちゃんと描かれていた。今までサバのミソ煮はスーパーで調理されてるやつをもっぱら買ってたが、これを見たらつい自分でやってみたくなり、やってしまった。切断面から煮崩れした。それと小骨は前もって取っておかなくちゃいけないんだな、きっと。
【なんのかんの】さん [DVD(邦画)] 7点(2010-05-16 12:08:41)(良:2票)
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