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ブルジョワってほどでもない西陣の織元の家、金貸しに潰されるその没落を描きながらも、各階層を織り込んであるのが眼目で、職工たちまで捉えている視点が優れている。けっきょくこの映画で対立しているのは階級よりも、古い考えと新しい考えで、この方がより日常に密着した混乱だったのだろう。職工連中も単一な新興勢力として捉えられているのではなく、今までの奉公関係を引きずっている者から割り切っている者までいる。姉妹でも「妾が勝手口から入ってくるような義理は古い」と言う末娘がいるが、彼女も没落ではオロオロし、婚約者のほうがまだ「新しい人」だったりする。姉妹の苦労を描いた後、機女の愚痴をソロッと入れるとこなんかがうまく、パッと世界が広がる。常に各階層に目を配っており、シナリオの新藤兼人としても優れた仕事だろう。画面は陰影深く、俯瞰が気になるのは宮川一夫と気にしすぎたせいか。美しかったのは宇野重吉が兄と橋の上で話をするシーン、空と電線を入れた見上げた図。シルエットで撮ったカットなんざ最高ね。
【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 7点(2013-03-21 10:07:39)
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