仕立て屋の恋 の なんのかんの さんのクチコミ・感想

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仕立て屋の恋 の なんのかんの さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 仕立て屋の恋
製作国
上映時間80分
劇場公開日 1992-07-17
ジャンルドラマ,サスペンス,ラブストーリー,小説の映画化
レビュー情報
《ネタバレ》 演劇はどうしても人間と人間のドラマという要素が強く、言葉の構築物なので、孤独を描くにも不自然なモノローグに頼るしかない。だが映画は人間と世界の関係を描くことができる。縄跳びをしていた少女とのかすかな接触や、飼っていたネズミをレールのそばに放す行為だけで、男の孤独が描ける。映画の利点だ。しかもこの主人公イールそのものが、映画を見るように向かいの娘アリスを見ているのである。スクリーンの中のヒロインへの観客の愛のように、四角い窓枠というスクリーン越しに、自分でBGMを流しながら、ロマンチックなメロドラマを演出する。現実との暖かな交流を断念したイールには、こういう傷のつかない関係しか考えつけなかったのだろう。この造形が見事。しかし覗かれる女が覗かせる女に変わり、スクリーンの境が溶け出して、話は悲痛さを帯びてくるのだが、この作品で面白いのは、静かな映画であるにもかかわらず、スポーツが多く登場することだ。まず競技者が横一列に並ぶボーリング、ランダムに交錯するスケート、そして向かい合うボクシング、と二人が向かい合っていくのにあわせるように、登場するスポーツも変化する。恋とスポーツが相似形を成していく。アリスの態度は最初はフェイントだった。しかしフェイントのつもりだったものが、正確に相手に向けられた強打になっていく。もしかすると彼女は違う相手とするべきではないゲームをしてしまったのかも知れない。決勝の自殺点を入れて途方に暮れている競技者。イールは、ゲームのルールを是認することが出来ないまま、映画を見る観客のつもりで競技場に入ってしまった競技者だ。望んでもいなかったのにいつのまにか走らされ、誰の声援も受けずに死のゴールへ一直線に導かれていった不運な競技者。
なんのかんのさん [映画館(字幕)] 8点(2009-08-18 12:06:43)(良:2票)
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投稿日付邦題コメント平均点
2014-03-15エデンの東(1955)8レビュー7.25点
2014-03-14アゲイン/明日への誓い6レビュー5.22点
2014-03-13オリバー!7レビュー6.08点
2014-03-12世界の中心で、愛をさけぶ6レビュー5.27点
2014-03-11真珠の耳飾りの少女6レビュー6.33点
2014-03-10ゴースト/ニューヨークの幻7レビュー7.02点
2014-03-09EMMA/エマ(1988)6レビュー6.00点
2014-03-08稲村ジェーン4レビュー2.43点
2014-03-07つぐみ5レビュー4.96点
2014-03-06ボイス・オブ・ムーン6レビュー5.25点
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