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恋愛ものに特有の「気分の波立ち」は描かれない。言葉の必要のないカップルとして登場し、あとは恋愛の安定した幸福感を描き続け、しかし実は男は少しずつ海に吸い寄せられていっていた、ってな話。耳の聞こえない恋人同士ってのがよく、『非情城市』をちょっと思い出したが、さらに遠くサイレント映画時代の恋人同士にも通じていたか。Tシャツを畳むだけで幸せな恋人。人が通過した後の風景をしばらく押さえておく余韻の効果がよく、視線と対象との間の距離をちゃんとわきまえてますよ、という礼儀正しさを感じる。対象を追いすぎないで、ちょっと目をそらしたり伏せたりしてる感じ。サーフィン大会で男が呼び出しに応じられないところで、本作で唯一障害がクローズアップされ、それだけに効果満点。静かに仲間外れにされてしまう。そこには悪意さえもない。こういう角度から障害者の痛みを描けたのが発見。その後もこの監督はしばしば障害者を画面に登場させるが、本作が最初だろうか。
【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 8点(2013-03-01 12:31:29)
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