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万人共有の熱い記憶と思われていたものも、時がたつと冷たい歴史記述になっていく。その熱量を少しでもとどめておきたい、という強い意思が感じられた。ナチ下のユダヤ人の生活を再現し記録する意思。じわりじわりと追いつめられ追い立てられていったその細部。踊れと命じられる屈辱。あるいは気まぐれの処刑、6人を撃ち、7人目の前に弾を込めなおすわずかの時間の、もしや、という一瞬の期待も描く。さらに「立て」に応じられなかった車椅子の老人の末路。一つ一つのエピソードが重い。主人公は窓から見ている。ユダヤ人やポーランド人の蜂起も、窓から見下ろすだけで参加はしない。見る人に徹していただけに、外へ出ていったときの、なにか剥き出しなるような怖さが特別だ。『裏窓』のすぐれた応用になっている。遠く上から見ていた殺された女性の死体と向かい合うように伏し、死人の振りをしてドイツ兵をやり過ごす場の生々しさ。映画の前半は、集合場所や貨車など、高密度で人々が画面を埋めていた。後半は一転して無人の世界、世界そのものの廃墟のような光景、その落差がなによりも雄弁だ。
【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 7点(2008-05-21 12:16:14)
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