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この黒丸(・)は並列であると同時に、進行でもあるんだろうね。娘と妻と母が形作っている世界であると同時に、娘が妻となり母となっていく世界、って。本作から松山善三が脚本に加わるが、あいかわらず金勘定の話が多いところを見ると、井出俊郎が主だったんだろう。土地の不安定さということもあり、『鰯雲』の都会版と見えないこともない。あれと同じような変動が都市部でも起こってるってこと。娘が一人戻ってくるだけで波紋が広がっていく。それを誰にも偏らず、多極構造を維持したまま進めていく(後半やや原節子に傾いたが、高峰秀子の存在が対象化してた)。嫁と小姑の機微なんかが見どころ。再婚をあまりあからさまに勧めるのも難しい、でも姑は微妙に反応する、ここらへんうまい。宝田明が「兄弟は他人の始まり」と言うと、草笛光子が「いっそ他人ならサッパリしてていいんだけど」と返すのなんか、成瀬作品に共通する感慨でしょうね。「他人でないことによるサッパリしなさ」がこの監督の味なの。家族の情愛を否定するわけではないんだけど、それへの嫌悪も見せてくれる。それはホッとする救いとしてあるんじゃなく、「懐かしい鎖」としてある。新興住宅地風のとこでチンドン屋が舞ってるシーンに思わず息を呑んだ。いったいあんな光景の何が良かったんだろう。
【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 7点(2012-12-20 09:52:52)
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