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次女の保険金に当然のようにたかり、下卑た男は出入りし、長男は頼りない。末娘高峰は兄のすね毛にさえ嫌悪を感じる、そういう一家のネットリ感を丹念に丹念に描いていく。どうしてそれが不特定多数の客の鑑賞の対象となる映画作品になるのだろう。次姉の死んだ亭主の妾のところに談判にいくエピソード。川や小さな橋のたたずまいが懐かしいということもあるが、この二人の味も素っ気もない会話もいいんだよ。ねちねち反撥し合いながら一つの共同体を作ってしまっている家族というものの、肯定でも否定でもない描写。これの対比として下宿人だった女性がいた。あまり深く立ち入って描かれてはいなかったけど、一人でやっていく厳しさと爽やかさが置かれる。あと下宿先の兄妹の睦まじさ(夜、光が漏れているさま)も、比較としてある。でも彼らは主人公の家族のネットリのリアリティを高めるために、デッサンされただけなのかもしれない。これらを倫理的判断を下さずにただ並置していく。普通の映画だったらちゃんと次女が見つかるところまで責任持つだろうが、成瀬はそんな分かりきったところにこだわらない。作中の言葉を使えば「ずるずるべったり」の、糸を引いてるネバネバを、なぜか不潔感なく描ききった映画ということだ。大人になった高峰秀子の戦後の成瀬作品はまた車掌さんから再スタートし、日本映画の黄金時代を築いていく。
【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 8点(2012-10-16 09:41:21)
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