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《ネタバレ》 小津の登場人物が礼儀正しく玄関から出入りするのに対し、成瀬は勝手口・裏口の世界。玄関で挨拶しているであろうようなシーンでも、そこは映さずすぐ客を迎えている室内になる。この映画そのものが、銀座の裏口的な世界を描いているわけ。玄関のようにあらたまって出入りしない分、どこかずるずるとした人間関係が続いていく。本作では三島雅夫。でもこれなんかはキッパリお金を与えることを拒んだり、かなり積極的に堀雄二との結婚を考えたり、成瀬の登場人物にしては決断力のあるほうだ。この朴訥男ぶりはちょっとわざとらしいし、香川京子と一日で片づけちゃうのもいささか無理が感じられたが、子どもへの愛を優先させた、ってことを描くための必要項目だったんだろう。おそらく本作は下町の描写を戦後になってまた本気で手がけた映画で、これに監督は手応えを感じただろうし、また同時代の成瀬ファンもホッとしたのではないだろうか。見事な点描。ちゃんとチンドン屋も通り過ぎたし。
【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 6点(2012-08-15 10:22:45)
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