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この映画は「知的障害者を純粋に描いている」以前に「知的障害者を単に脳が7歳のままの青年みたいに描いている」時点で間違っている。これじゃあ、「ジャック」における「人間の4倍成長する10歳の子供」と区別がつかない。知的障害者にも「人間能力」の中で普通の人と変わらない部分と苦手分野とするところがあり、さらに日常生活の衝撃に脳が過剰反応してパニックになるなど、映画と比べて健常者と変わらない点、および映画にはない知的障害者ならではの困難がある。勿論「個人差」もあるのでショーン・ペンの演じる人みたいな人もいるだろうが、少なくとも知的障害者が認知している世界は映画のように子供が見るような平和で美しいものではなく、「スターリングラード」や「戦場のピアニスト」に見るような、自分を守ってくれる秩序のない、いつ誰かにぶっ殺されるかもしれない恐ろしい世界だ。こんな世界で障害者は障害者なりの執念と防衛術、恐怖に対する自制心を持って24みたいな一日を送っている(これは知的障害を持つ妻から聞いた)。そこを追求して映画を作ってくれたら、障害者ネタは極太の感動大作にもファンタジーにもサスペンスにもなるのだ。それが許されないのは「差別」「偏見」という言葉が一人歩きしてしまっている結果なのだと思う。でも障害者にとって一番怖いのは差別ではなく、間違った知識を持たれること「そんな人いない」として扱われることだ。僕はこれからの障害者映画は「健常者社会との融合」「愛の感動作戦」以外にも様々な角度からその世界観を広げて行って欲しいと思うし、それは自分の事を分かってほしい障害者にも、当たり前にがんじがらめになっている健常者にも、そして何より映画という素晴らしい芸術作品に新しいフロンティアが出来る意味でも素晴らしいことだと思う。
【はち-ご=】さん [DVD(吹替)] 4点(2008-11-09 02:36:24)
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