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《ネタバレ》 史実に基づいた戦争群像劇大作にしたかったらしいが、中途半端に終わっている。広義の日中戦争を多視点から描くという姿勢は称讃に値するが、如何せん、いわくありげに登場した人物の多くが途中からいなくなるようでは、脚本の未熟さ、企画倒れの謗りを免れない。一言でいえば「詰め込みすぎ」だ。ダイナミックな戦闘シーンは見れても、ダイナミックな人間ドラマは見られない。戦争の実態を暴き、振興財閥である伍代家の人達が、戦争という魔物に呑み込まれることによって、どのように変貌するかを描くことで、人間の本質を顕現させるだけでよかった。女情報屋、人妻とのよろめき、ベッドシーン、抵日朝鮮人とその愛、満州二世の医者、中国大商人の娘の抵日闘争、ナイフの名人などは、ばっさり切り捨ててよい。第三部が一部二部と較べて退屈しないで見れるのは、描く視点を絞ったからだ。恋愛パートが全体の三分の一を占める。お金持ちのうわついた恋愛を描いたところで、世間の実情とかけ離れるだけ。ベットに誘うのはみな女性からという共通点がある。農村の不幸な身売娘を登場させたのはお手柄。身売りせざるをえない不況の実態があったからこそ、武力をもって国外に進出すべしという世論が形成された。この娘が、最後に「兵隊さん、今度遊びにおいでよ!可愛がってやっからさ」と叫ぶが、これこそが生身の人間の痛切な心の叫びであって、感動するものがあった。「夢中になれるものを探しているの」という長女の言葉の何と薄っぺらいことか。お金持ちの恋愛は、虚構にしか見えない。歴史観は、戦争反対、陸軍批判、資本主義批判の立場で、共産党賛美のプロパガンダに彩られている。陸軍幹部はみな愚かで、資本主義は民衆を搾取し、死の商人である財閥は醜怪で、共産党員は当局の弾圧にも屈せず、常に貧しい人たちや労働者のために闘う正義の人らしい。
張作霖爆殺や柳条湖事件を再現したミニチュアは失笑レベル。明らかに人形とわかる死体を吹っ飛ばすのはやめてほしい。他方、ソ連と共同して撮ったノモンハンでの戦闘場面は迫力があった。当時の歴史認識では、ノモンハン事件では、日本軍が近代兵器を擁するソ連軍に一方的に蹂躙されたことになっていた。しかしソ連崩壊後の新資料により、ソ連側にも日本を上回る被害があったことが判明した。実質引き分けで、プロパガンダによるソ連の勝利である。不満は縷々あるが、見ておいて損はない映画だ。 【よしのぶ】さん [DVD(邦画)] 7点(2012-12-08 03:39:11)
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