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物心ついた頃から滅多やたらに耳にする名前だけど、ストーリーの中で台詞付きで描かれたものを見るのは(パロディっぽい端役は除いて)たぶん初めて。初めてだけど、そういう意味での感慨は無かった。それは恐らく日常的にこの映画の中のようなシーンを目にしているからだ。この映画を見た率直な印象だけど、ヒトラーはある程度の規模の企業に時々見かけるオーナー社長でした。仕事に直接関係の無い人には優しいし、徳のある人物にも見える。ひとたび怒り出すと、論旨が変でも指摘できる人がいない。それはヒトラーだけじゃなく、周囲を取り巻く連中にも言える。本心から心酔しているタイプ。無条件に追従するタイプ。覚悟を決めて自分の意見を具申するタイプ。見切りを付けて逃げ出すタイプ。いや、企業のトップと取り巻きの関係にソックリですよ。しかも、概してヒトラーのようなタイプの社長がいる企業の方が経営的には成功していますね。求めるものが違っても、多人数を相手に組織を統べて行く方法論は似通ったものになるということか…。そういえば、傾いたら一気に崩壊という点でもソックリだ。今作はヒトラーの映画というよりは、総統府全体のお話で、ヒトラーの内面を克明に描いているという感じでもなかった。元秘書の女性の視点から見ているという構成らしいが、積極的に彼女の意見が聞こえる訳でもなく、淡々としていました。ユダヤ人虐殺に関しては何も触れられていないので、観る人によってはそのスルーぶりに怒りを覚えるでしょう。自分は、今さらヒトラーを非難することに意義を感じない人です。同じことを繰り返さなければそれで良い。だから、この映画も特に感じ入ることもなく、普通に歴史のビューポイントがひとつ増えたという感想です。
【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2009-12-23 23:37:12)
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