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《ネタバレ》 子供から青年期までは、純粋に絵を描くことが好きな主人公が、その純粋さゆえに世の中と上手く折り合えない一種の青春映画でした。自分がやりたいことと、社会の文法やテンポが違うことで周囲は変人扱いする。実はこの時点で真知寿は既に芸術家だったと言っても良い。青年期の中頃から「ゲージュツ」という言葉が聞こえ始める。真知寿は創作に対してとても素直な性向を持っていたため、周囲の意見を必要以上に聞いてしまう。画商や学校仲間がいう「ゲージュツ」に反応して馬鹿らしい迷走が始まる。貧乏を続け、死人をスケッチし、娘が売春で稼いだ金を使い、挙句はその娘の亡骸にさえ「ゲージュツ」の幻影を追う…。以下、ちょっと自信が無いけど自分の解釈です。タイトルにいうアキレスは「芸術」で、亀は「ゲージュツ」です。俊足のアキレス(芸術)は、亀(ゲージュツ)なんて物ともしないスピード(創作や表現の本質)を持っている。しかし、例のパラドックスによって追い抜けないという暗示を掛けられます。この暗示は画商のアドバイスや学校仲間の前衛へのこだわり。子供の頃から「芸術」をやっていたはずの真知寿は、「ゲージュツ」に脅迫され、生来の純粋さから悩み続けます。アキレス(芸術)が亀(ゲージュツ)に追いついたとは、妻の帰還と空き缶のやり取りから、真知寿が「ゲージュツ」の虚無に気付いたということだろう。でも、自分の解釈が正しいとしたら、この映画にはいい点数を付けられない。芸術の判定は創った人や接した人の主観で決まることで、今さら芸術とは何か?的な問いに踊らされるプロットが古い。創作を志した人なら、誰しもがかなり初期にクリアするスタンスの問題です。画商の言いなりに作品を創る人なんているのだろうか。生活費が必要なら商業用イラストをオーダーに沿って描けば良いのだ。答えが明白な命題に対して、極端な人物像を作ったうえに、家族を省みない非情な行動を取らせることに意味を感じない。でも、解釈に自信がない理由は、どうもあのエンディングの翌日も奥さんを使って「ゲージュツ」を模索する真知寿がいる気がしてならないからだ。だとしたら、怖い映画だ。
【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(邦画)] 3点(2009-10-26 03:49:32)
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